The Burton Blog

Kilroyクルーに聞いてみた: なぜサマーキャンプに行くべきなのか?

サマーキャンプでの1日はバンから始まります。

みんなで乗り込む11席の大きなバン。これまで数百人を超えるスノーボーダーが乗り降りしたバンの床や座席は、もちろん泥やジュースなどの染みだらけ。走行距離もハンパなく(そのほとんどが凸凹の山道!)、サスペンションはイカれ気味。でも、バンは走り続けます。そう、残雪スノーボードパークにキャンパーやコーチを連れていくため。夏でも滑れるスノーボードパークは、まさに夢のテーマパークなのです。

今回Kilroyクルーがお邪魔したウッドワードカッパーは、コロラドのロッキー山脈に位置し、標高は約3,000m。7月を前に気温は15℃ほど。パークセッションには最高のコンディションです。

Sy Moran, Jake Canter, and Hollis Dupre posing in the sun.
ゲストとして参加したKilroyクルーの面々: (左から)サイ・モーラン、ジェイク・キャンター、ホリス・デュプレ | All Photos: Chip Proulx

冬を追いかけて。

サマーキャンプは、スノーボードギアで言うところのバインディングのストラップみたいなものです。つまり、シーズンとシーズンを“つなぐ”ということ。世間的にはオフシーズンとされる夏にスノーボードができる。南半球へ行かずとも、ほぼ1年を通して滑れる。サマーキャンプに感謝しないとですね。

Asher Humphreys, air to fakie.
毎日トライするニュートリック。この日のアッシャーはエアtoフェイキーをテールグラブで
Asher Humphreys, boardslide.
キャンパーみんなでセッション。コロラドローカルのアッシャー・ハンフリースはKilroyクルーとも仲良し

夏に滑れるだけがサマーキャンプの醍醐味ではありません。ハイシーズンと違って滑れる場所が少ないため、雪を求めて世界中からスノーボーダーが集まってくるのです。ある意味、濃度と多国籍感はハイシーズン以上かもしれません。もちろんライダーたちのテンションは常にマックス。スノーボードの歴史を振り返ってみても、サマーキャンプを舞台にした数々のストーリーが語り継がれ、多くの写真や映像がメディアを賑わし、何よりカルチャーを育むうえで欠かせない存在であり続けています。肝心のライディングはどうかって?言うまでもなく最高です。

もちろん、ローカルリゾートへ滑りに行くよりはお金がかかります。なので、キャンパーたちはこの地にたどり着くため、必死にお金を稼ぐのです。とにかく長時間働いたり、近所の芝刈りを全て引き受けたり……。はたまたカンパを募って資金を集めたり、交通費節約のためヒッチハイクでやってきたり、ここまでの道のりは人それぞれです。サイ・モーラン曰く、「(サマーキャンプに行きたいと)強く願えば叶うものさ」とのこと。

               
  • サマーキャンプはオフスノーアクティビティも充実。ウッドワードカッパーには、こんな室内施設も……

    サマーキャンプはオフスノーアクティビティも充実。ウッドワードカッパーには、こんな室内施設も……

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  • あらゆる年齢層が楽しめる遊び場といった感じ

    あらゆる年齢層が楽しめる遊び場といった感じ

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  • 特に人気なのがトランポリン。ここで空中での動きを覚えて、いざオンスノーへ!

    特に人気なのがトランポリン。ここで空中での動きを覚えて、いざオンスノーへ!


結局のところ、行って損はありません!

より深くサマーキャンプのことを知るため、Kilroyクルーから2人のライダーに話を聞いてみました。2人とも、多くの夏をサマーキャンプで過ごしてきたからこそ今があります。もちろん、ウッドワードカッパーのサマーキャンプに参加した経験もあり、それが今ではBurtonウィークのゲストライダーなのです。

Jake Canter standing on a mini ramp.
小さいときから、ウッドワードカッパーのランプでスケート三昧だったジェイク。その後スノーボードにハマり、現在の活躍は周知の通り

ジェイク・キャンター (@jake.canter)
年齢: 15歳
ホームタウン: コロラド州シルバーソーン
サマーキャンプ歴: 8年目
クルーでの立場: Kilroyクルー最年少
ミッション: たくさん表彰台に上がり、ライディングを楽しむこと

何年くらいサマーキャンプにきているの?
初めてウッドワードカッパーにきたのは7歳のときかな。それからは、ほぼ毎年だね。以前はスケートボードにのめり込んでいたんだ。冬の間もボウルを滑りにきていたくらい。で、あとからスノーボードを始めたんだ。家から20分くらいだから、ハイシーズンもここで滑っているよ。

免許は?
まだないんだよ。

どうやって山まで上がってくるの?
親が連れてきてくれるんだ。最高に感謝しているね。

サマーキャンプではかなり上達した?
そうだね。コーチがたくさんサポートしてくれたよ。540や720を覚えたのもウッドワードカッパーだった。8歳で初めてバックフリップをやったのもここだった。友達もたくさん参加しているし、みんなで滑るのは本当に楽しいよ。グッドヴァイブスしかないから。楽しい時間を過ごせたときこそ、新しいことを覚えられるんだよね。

初めてプロに遭遇したのもサマーキャンプ? そのときのことって覚えてる?
そう、初めてのサマーキャンプでFrendsクルーを見たんだ。彼らのビデオを見て育ったから、テンション上がったね。

昔はよくブリッケンリッジで滑っていたから、しばしばショーン・ホワイトダニー・デービスを見かけたよ。でもサマーキャンプは違ったね。「ヤベー!一緒に滑ってる!」って感じさ。

今では、キミに憧れているキッズがいるわけでしょ?
キッズに対して影響力があるなんてビックリだよ。僕をキッカケに、新しいトリックにトライしてくれたら嬉しいね。とにかく楽しい時間を過ごしてもらいたい。キッズが楽しんでいると、こっちも楽しくなるからさ。キャンパーとして参加していた頃、やっぱりゲストライダーにプッシュされることが多かったんだ。そうやって上手くなっていくわけ。結局のところ、上達するには楽しむことが必要不可欠なのさ。

Jake Canter on the jumps.
慣れ親しんだジャンプでスタイリッシュに飛ぶジェイク

ずばり、サマーキャンプに参加するメリットは?
これが一番大切だと思うんだけど、とにかくいろんな人と出会えるってこと。この前、中国からパティって女の子がきてたんだ。地元のリゾートで滑っているだけじゃ、なかなか出会わないよね。

あとは、6月にスノーボードができるってことかな。東海岸やテキサス、ニューメキシコに住んでいたら、まず夏に滑るなんて想像すらしないよね。新しいトリックを覚えるのにも最高だよ。雪が柔らかいから、何だってトライできるんだ。アイテムもいろんなサイズが揃っているし。上達ペースもかなり早いよ。

もちろん、普通のサマーキャンプならではの楽しさもあるんだ。ルームメイトがいて、キャンプ飯を食べて、楽しいことだらけさ。そこにスノーボードパークがあって、教えてくれるコーチがいて、バックフリップ練習用のエアバッグもある。とにかく一度は参加すべきだね。

ここで生活するうえでのアドバイスを3つ教えて。
まず日焼け止めはマスト。ある夏、目が熱傷になって大変だったよ……。1週間もいれば、博物館行きのゴーグル焼けになるから。

次に、お菓子を持参すること。ルームメイトに食べられないように、しっかり隠しておくことも忘れずにね。

最後は、とにかく楽しむこと。それが全てさ!

Sy Moran at Woodward Copper.
サマーキャンプ育ちと言っても過言ではないサイ・モーラン
Sy Moran, nosepress.
毎年、夏になるとプレスしにやってくるサイ

サイ・モーラン (@sy_moran)
年齢: 23歳
ホームタウン: コロラド州ブリッケンリッジ
サマーキャンプ歴: 10年目
クルーでの立場: Kilroyクルー最年長
ミッション: 映像を残しまくる

まず、サイとサマーキャンプの話を聞かせてよ。
初めてここにきたのは10年前。ウッドワードカッパーのサマーキャンプが始まった年で、しかも最初のセッションだったよ。以降、毎年きているね。

10年前の自分にとって、サマーキャンプはどんな存在だった?
とにかく滑れるってことに興奮していたよ。年上のスノーボーダーを間近で見る良い機会でもあったし、ただただ滑りまくりたかったのを覚えている。

しかも夏ってのがさらにヤバい。今でもそうだけど、当時は一生滑っていたかったからね。プロになるとかは考えてなかったけど。

あの頃、周りは年上ばかりだったから、彼らの滑りを見るのはクールだったよ。今じゃ立場が逆になったけど、それはそれでドープなことさ。キッズと一緒に滑って、たくさん話して、楽しい時間を過ごす。もっとキッズのモチベーションを上げたいね。彼らのテンションに比例して、こっちのテンションも上がるから。そうすると、またキッズのテンションが上がる。倍々式さ。

当時、憧れていた先輩スノーボーダーっていたの?
もちろんさ。今でも一緒にチルして、一緒に滑るよ。ロニーって人なんだけど、とにかく陽気なコーチだった。プレッシャーなんてなかったよ。「ここでできる一番クールなトリックは何だと思う?」って具合に、ひたすら高難度のトリックをやらせるって感じじゃなかったんだ。それより、「イケてることをしようぜ!」ってノリ。彼に教わったからこそ、俺は今でもスノーボードを続けているのかもしれないね。

Sy and Hollis stoking out a camper with a new board!
キャンパーからプロまで、みんなで滑るのがサマーキャンプ
Campers hanging out with Pros at Woodward Copper.
キャンパーのオーウェンくん。ミニコンテストでボードをゲット。サイとホリスも祝福

スノーボーダーやスノーボードコミュニティにとって、サマーキャンプってどんな存在?
Burtonのようなメーカーや俺たちのようなライダーにとって、たくさんのキッズと触れ合うことができる意味でも重要だと思う。キッズにとっては、目指すべきライダーと知り合えるまたとないチャンス。いろんなスタイルのライディングを見ることもできるし。地元ミネソタではレールばっかりやっているキッズが、ここではコロラドローカルのジャンプを見ることができる。カリフォルニアやニューヨーク、テキサスなど、キャンパーはいろんな土地からやってくるから、多種多様なライディングと接することができる。得るものは多いと思うよ。

1年を通して滑れるキッズってなかなかいないよね。そういったチャンスをもらえるだけでも素晴らしいことさ。ウッドワードカッパーでは10週間にわたりサマーキャンプが開催されているから、仮に全セッションに参加すれば、ほぼほぼ1年中スノーボードができるってこと。冬がきた時点で、かなりのアドバンテージだよ。

そして何よりグループで行動し、みんなで滑るんだ。地元へ帰る頃には、新しい友達がたくさんできているはずさ。

1対1でのコーチを好む人が多いけど、サマーキャンプではグループ行動が基本。だから、一緒に上達することができるんだ。誰かがバックフリップにトライしていたら、「自分だって!」って気持ちになるでしょ。

お金がかかると心配している人に、何か言いたいことはある?
サマーキャンプへ行くためのお金?本気で行きたければ、例えばバイトしまくったり、とにかく行動あるのみさ。今年は行けないかもしれないし、そもそもバイトできる年齢じゃないかもしれない。でも、本気で行きたければ、何か方法を探さないと。

俺が15歳のとき、3ヶ月間のニュージーランドトリップに行くチャンスが巡ってきたんだ。両親も多少は援助するって言ってくれたけど、全額を負担してくれるわけじゃなかった。行くための方法を考え抜いたよ。結果、地元の企業を訪問しまくってスポンサーをお願いしたんだ。かかりつけの歯医者にまで行ったからね。$50カンパしてくれる人もいれば、無視する人もたくさんいたよ。

シンプルに言えば、スノーボードに行くのと同じだよ。例えば、リゾートまでの移動手段がないとする。でも、どうしても滑りに行きたい。だったら行く方法を考えるでしょ?オリンピックに出たい、スノーボードムービーに出たい、X Gamesに出たい、ただ上手くなりたい、そのために必要なことを実行すれば、きっとベターなスノーボーダーになれるよ。行動あるのみさ!


今回紹介したウッドワードカッパー以外にも、北米ではいくつものサマーキャンプが開催されています。夏に海外へスノーボードトリップ……、ハードルは高いですが、宝くじが当たったらぜひ行ってみてください。Winter 2020モデルのKilroyボードも近日発売!


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